2015年4月27日月曜日

OECC(海外環境協力センター)訪問しました!

こんにちは!CYJの内藤です。
先日、CYJの内藤・塩原でOECC(一般社団法人海外環境協力センター)に訪問をしました。

今回の訪問目的は、気候変動対策の国際交渉で日本がリーダーシップを取っている、
二国間クレジット制度(The Joint Crediting Mechanism)の課題と今後の展望について、
現地でプロジェクトを展開する方々よりお話を聞くことでした。

JCM制度が必要とされる背景】
 現行のCDM(クリーン開発メカニズム)の問題点として、国連の中央集権的な統一管理による審査の長期化が挙げられれます。クレジット化により、準備から登録まで2年以上が必要とされ、その間に刻々と動く世界の政治や経済、プロジェクト実施地の状況変化の対応に追いつくことは非常に困難となっています。また、案件実施国の国別シェアの偏りや高効率石炭火力(超々臨界圧など)が石炭利用50%超の国に限定され、CO2の地中貯留(CCSCarbon dioxide Capture and Storage)などが対象外など、プロジェクトの偏りも指摘されていました。

JCMとは?】
日本国では、二国間の契約において海外の相手国に対し、温室効果ガス削減技術・製品・システム・サービス・インフラ等の普及や対策を導入し、排出削減を行った場合、その排出削減量を評価、目標充当を可能とする二国間オフセット・クレジット制度(BOCMThe Bilateral Offset Credit Mechanism)の検討やパイロットプロジェクト事業の推進が行われていました。また、方法論については、簡便性と利活用の視点から、チェックリストによる制度適格性判断やフローチャートによるプロジェクトの最適な算定方法が決定づけられるなどの検討が進められています。

【日本国の動き】
日本国では気候変動問題や、問題解決に係わる経済発展や各国間の摩擦解消に向けて、地球温暖化問題に関する閣僚委員会を設け、次のような提言を発表してます。

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『途上国との連携:低炭素技術の普及・促進,新たな市場メカニズムの構築気候変動問題を解決するためには、先進国の低炭素技術・製品を速やかに普及させる仕組みを官民一体で構築し、今後、経済発展に伴い温室効果ガスの排出増が見込まれる途上国において、排出削減と経済成長を両立させる低炭素成長を実現することが重要である。この一環として、我が国としては、これまで重要な役割を果たしてきた京都議定書におけるクリーン開発メカニズム(CDM)のさらなる改善を目指すほか、新たな市場メカニズムの具体化に向け、二国間協力(二国間オフセット・クレジット制度)や地域協力をさらに推進していく。

我が国は、二国間オフセット・クレジット制度の設計と実施に向けた知見・経験の共有のためにこれまで28 か国との間で実現可能性調査を進めている。また、一部のアジア諸国との間で同制度に関する政府間協議を開始した。同制度の2013 年からの運用 開始を目指し、今後これらの相手国との間でモデル事業の実施、キャパシティ・ビルディング及び共同研究を推進すると共に、他の関心のある諸国との間でも政府間協議を進める。これらの取組を通じ、途上国との幅広い協力関係の構築を目指すとともに、積極的に情報発信を行っていく。』(平成231129日地球温暖化問題に関する閣僚委員会 了承)

二国間オフセット・クレジット制度は、日本国の制作の重要な柱として、官民一体で進められている取り組みとなる。

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『―――JCMプロジェクト現場からの意見・OECC訪問・調査内容―――』

ここから訪問レポートですが、
現場の職員が考えるJCMの課題・展望について、以下にまとめてみます。

▪️1. JCMの最新動向

日本政府の補助金だけでなく、アジア開発銀行からも補助が出るようになったことが、最新の動向とのことです。もともとは環境省・経済産業省予算で運営されてきた制度なので、新しい一歩と言えそうです。


▪️2. JCMが抱える課題

JCMが抱える課題は多数ありますが、
大きく「制度の課題」「交渉スタンスとしての課題」の2つに分けて考えることができます。

【制度の課題】

・プロジェクト条件による制約
JCMにはスキームの条件があり、それに合致しないとホスト国からの補助が出ません。
つまり、選考で一定の条件をクリアしないと補助がでないということです。

・相手国の意思による問題
日本側は技術を導入するが、やるのは現地。現地で予算を付けてもらわなければいけません。モンゴルの場合、発電関係は国営なので、モンゴル政府が意思決定をします。
いくら綺麗な絵を持って行っても、向こうがやらないと決めたら絵に描いた餅になるということです。

・現地の人がやりたいこと、ニーズに対応できる技術を日本が持っていない
・メンテナンスの問題
仮に日本の高い技術を導入できたとしても、「販売の販路」、「取り扱いの代理店の有無」、「設備管理ができる人材」等、現地でメンテナンスができる体制がなければうまく稼動はできません。また、日本と全く違う環境に技術を導入した時、土地柄的(現地の気候等)に耐えられない技術もまた存在します。

・技術流出、ライセンスの問題
企業としてお金を出して作り出した技術を、外に出したくないという思いもまたあります。

・相手国のMRV実施能力不足、MRV実施から発生するコストの問題
CO2の測定報告は途上国にとっては相当の負担となります。ここが原因でFSができないサイトが増えているとのことでした。工場でのプロジェクトをやるとしたら、そこの工場の管理が必要になります。

CO2メーターが壊れていた、または国際標準の規格外であると、
その時点でプロジェクトは進めることが出来きません。
つまり、どこまで完璧に実施し、どこまで妥協できるか?が重要になってくるということです。しかしながら、結局は国連に報告しなければならないのですが…(MRV形式)


<ここまでのまとめ・ポイント
本当はざっくりやった方がプロジェクトは進むし、削減も効果的にできるはずです。
しかし、今までやってなかったことをやらせることが、JCMのハードルとなっているとうことです。

細かくやればやるほど、コストもかかるし進まないが、やらなければやらないだけ、不公平になるということです。(測定したCO2の価値が違ってくる。ちゃんとやったところが損をする構図のため。)


★質問1:それでは、ホスト国にとって技術移転以外のJCMへのインセンティブは何かあるのでしょうか?

温暖化対策に貢献しているとは言えるが、目に見えてメリットは感じられづらいのが現状とのことです。今はボランティア精神頼みとなっています。

★質問2:環境省PJによる補助金の支給期間が限られているのかで、今後の動向についてどう考えれば良いか。

クレジット化に進むとは思うが、それ自体が壁になってしまう
(CDMが失敗した原因の1つであり、訴訟も発生している。)
必ずしもクレジット化だけを考えない方が良い?
技術移転のための補助金制度の方がいいかもしれない。
⇒クレジット化するものはクレジット化、それ以外は緩くして補助金で賄うのも手。

また、日本の人(事業者、国民全体)にとっても、ある程度メリットがないと続きません。(技術・資金等が)全部日本から出てあげるだけの制度では、ただ苦しいだけで続かないということです。また、政権交代等の外的要因で結局途中で終了してしまうリスクもあります。

全ての人がメリットを受けるのは難しいですが、ある程度お互いがメリットを感じることが出来る制度になっていく必要があります。一過性のものにしないということが重要です。

【交渉スタンスとしての課題】

COP20での国際交渉を終えて、「立場の違い」、「受けるメリットの違い」が見えてきました。

・立場の違い
途上国に関して本当はJCMをやりたいけど、マルチ(多国間交渉)の場ではJCMに対する支持を公言できないこともあるとのことです。バイ(2国間交渉)になると日本に対して「さっきはごめんね。本当はJCMをやりたかったんだ。」という状況になることもあります。特にインド・中国になると、途上国を代表する国になり、CBDR原則に基づき、そもそも削減しないというスタンスをとるため、「JCMはやりません」という結論になってしまいます。一方インドネシアやベトナム等になると一歩下がった交渉スタンスにいるのでJCMの交渉ができるのです。

・受けるメリットの違い
中国くらいになると削減するための積立予算がたくさんあるから問題ありませんが、モンゴルくらいになると、対策予算が少ないため、はっきりともらえる立場につくことがあります。EUはEU-ETSを守りたいので脅威を感じているが、アメリカは放置し、自国内の状況を見るのに終始しています。アメリカはCDMの前段階であるAIJを既に持っており、むしろJCMAIJの真似だと思っており、また最近はシェールガスがあるから、交渉やりやすいポジションにいます。日本は原子力事故でいつもダメだしを受ける立場にあることは受け入れるしかありません。

▪️3. COP21に期待していること

約束草案の中にJCMは入るはずである。
=INDCを議論するFVA内のBOCMの中にあるため。

ポイント
日本の人にとって不利にならないように。
ギガトンギャップは事実だが、大幅に譲歩せず、実現可能なものをしないといけない。
仮にしても政権がかわったら、また進まなくなる。それではいけない。


以上、JCMの課題・展望について勉強することが出来ました。
自分も、カーボンオフセットを企業に営業をしたことがあり、
企業や現地への負担の課題については、思わずうなずいてしまいました。

JCMは外見上はすごく良い制度なのですが、まだまだ解決しなければならない課題が、山のようにあるようです。しかし、JCMは日本がインセンティブをもって打った野心的な政策であると、自分は考えています。気候変動や環境問題に対して、攻めの一手を打つために、この制度をより改善していく必要がありますね!

これからも、JCMの動向を見守っていきましょう!

最後に、今回訪問を受け入れて下さった、
OECC担当者様に厚くお礼申し上げます。
誠にありがとうございました。





2015年4月1日水曜日

COP21 モチベーションアップ!

こんばんは!
CYJの内藤です。

先日30日、経済産業省本館にて
中央環境審議会地球環境部会 2020年以降の地球温暖化対策検討小委員会
産業構造審議会産業技術環境分科会地球環境小委員会約束草案検討ワーキンググループ
合同会合(第6回)
が開催され、自分も参加してきました!(なんて長い会議名なんでしょうッ笑!)

主なトピックとしては、
1.エネルギーミックス
2.二国間クレジット制度(JCM)
3.森林吸収源対策
について話し合われました。

個人的にJCM(Joint Crediting Mechanism)に強い関心があります。
将来この制度に関わってみたいとは感じています。
今回の審議会参加では、INDC(Intended Nationally Determined Contribution;約束草案)の中に、
JCMを入れるか、入れないか? の議論が自分の中では新しい発見でした。

JCM制度とは、日本の優れた低炭素技術・製品・サービス・インフラ等の普及や温暖化対策の実施を通じた海外における温室効果ガスの排出削減・吸収への貢献を定量的に評価し、日本の削減目標の達成に活用するための制度のことです。
カーボンオフセットをイメージして頂ければと思います!!

2011年COP17@ダーバンにて日本が提示した「世界低炭素ビジョン」に盛り込まれた制度で、
現在の気候変動国際交渉にて大きなポジションを担っています。
COP20でも2週目のハイレベルセグメント中にJapan PavilionにてJCMのSide Eventが開催され、
その後もJCM参加国12カ国と日本の環境大臣によるイベントも開催されたほどです。
※自分もCOP20@LimaのJCM Side Eventに参加していました。

JCMの詳細に関しては、新メカニズム情報プラットフォーム の情報がとても分かりやすいです。
2014年10月にインドネシアと初のプロジェクトが試行され、今後の発展が期待されています!


●入れるべき理由)としては、
・日本が仕掛けた政策なのだから、ちゃんと明確な目標値を出し入れるべきである点、
・国連からの正式な審査を受けている点
が挙げられており、

●入れるべきではない理由)としては、
・ホスト国と日本との間で削減量のダブルカウントが発生するリスクが高い点、
・海外の中ではJCMに対し反対する意見もある点、
・そもそもINDCを考える上で目標は”ボトムアップ”(法的拘束力なし)が前提になっているのだからJCMを入れる必要はない点、
・JCMをINDCに入れることで産業の空洞化を招く可能性がある点、
などが挙げられていました。


JCMの目的としては、京都議定書におけるCDM(クリーン開発メカニズム)を補完し、さらにCDMよりも対象はにが広い排出権取引の画期的な制度として位置づけられてきているので、INDCの中に入れることが普通であると、個人的には考えていましたが、そこは勉強不足であったと感じました。


現在INDCsはEU、スイス、メキシコ、ノルウェー、ロシア、アメリカ等が提出しており、日本は野心的な草案を提出することが求められています。
エネルギーベストミックスを検討している現在、INDCの中にJCMを入れるか?入れないか?
は慎重に判断しなければなりません。
参考程度に、EUはINDCにクレジット分を入れていません(予想は出来ましたが……笑)

今後の動きに注目ですね!!

ちなみにINDCs・JCMを考える上で、
内藤バイアスによるCOP交渉の流れをまとめたいと思います。

時はCOP15@Copenhagen。当時は京都議定書期間ということで日本は6%の削減が法的拘束力を持った義務を背負っていました。(これをトップダウンと呼びます。)
COP15の交渉は、2020年までの目標でした。
日本はCOP15前の国連気候サミットで、「全ての主要排出国による公平で実効性のある国際枠組みの構築と意欲的な目標の合意を前提に、2020年までに1990年比25%削減を目指す」と総理が宣言しています。(あの時は拍手喝采でしたね笑)

当然、その当時の日本の政策では25%削減なんて不可能でした。
ところが、その目標を法的拘束力をもってコペンハーゲンで合意しようとしたその時、
とある事件が起こって、合意に至りませんでした。
そこで、トップダウンはやめて各国が目標を提示しましょう!というボトムアップ提案が出ました。
合意しそうになったが、結局合意ではなく留意になってしまいました。(コペンハーゲン留意)

CDMはあくまでトップダウンが前提で成り立つ市場メカニズムなので、EUとしてはここで合意できなかったことは、世界的なミスとなります。

INDCsは、COP15以降のボトムアップの新しい枠組みを構築する中で誕生したものと言えます。
また、JCMは25%削減を目指す上で、当時画期的な政策を持っていなかった日本が、世界を相手に交渉するうえで、日本の低炭素技術の移転と排出権取引を行ううえで、かなり画期的な制作であったと思います。

JCMの頭のいいところは、CDMのように同時に様々な国がプロジェクトを行うのではなく、二国間内でのプロジェクトのため即効性がある点であると僕は解釈しています。

現在は京都議定書第2約束期間で、日本は不参加ですが、
2020年以降の枠組みでは野心的な草案を提出して欲しいと一個個人として思います。

                           「完」






・・・・・・なんて言っている暇はないですよ!日本ユースのみなさん!!!!

もう、すぐにCOP21@Parisがやってきます。
2020年以降の枠組みが決まる、超重要な会議です。

ぼーとしている暇はありません!

COP21に向けて、モチベUPムービーを作成しました。
これを見て、COP21を乗り切りましょう!!!





では、またどこかでお会いしましょう!