2010年12月10日金曜日

【特別インタビュー】 COP16における日本のNGO [WWFジャパン 山岸氏]


現在COP16に参加しているWWFジャパン 自然保護室 気候変動プログラムリーダーの山岸尚之さんに、COP16における交渉で日本のNGOが重視していること、また若い人たちへのメッセージをお話いただきました。

― 今日は、交渉で大変お忙しい中お時間を割いていただき、大変ありがとうございます。まず初めに、日本のNGOCOP16に来ている団体の構成を教えてください。

日本から来ているすべてのNGOについて把握はしていませんが、WWFジャパンはClimate Action Network Japan(以下CAN Japan)というネットワークに参加しており、これは世界的な気候変動に関するNGOネットワークClimate Action Network International」の日本におけるネットワークです。CAN Japanとして、私の所属しているWWFジャパンなど5団体より約10名前後がCOP16に参加しています。

気候変動交渉は非常に多岐にわたり、一団体ですべてのテーマをカバーすることはとても難しいです。そのため、CAN Japanに参加しているそれぞれの団体は、たとえば、メカニズム、森林など特に焦点を当てている分野があり、役割分担がなされています。


CAN JapanとしてCOP16に参加している日本のNGOは役割分担があるのですね。それでは、CAN Japan全体として、ある程度固まっている立場や交渉のポイントはあるのでしょうか。

昨年デンマーク・コペンハーゲンで開催されたCOP15では、2013年以降の枠組みについて決めることができず、「コペンハーゲン協定」を「留意する」という弱い政治合意をするに留まりました。その結果、各国には国連の枠組の下での交渉はもう難しいのではないかというネガティブな雰囲気が広がりました。交渉をしても決まらないことによる「交渉疲れ」が雰囲気として広がった一年ではなかったかと思います。

その中で、日本政府が会議初日に発した「日本はいかなる状況でも京都議定書の下で削減目標を記すことはない」という発言は、これからなんとか合意の成立に向けて努力しようという各国のモチベーションを大いに下げるものであると考えています。日本政府には、より前向きな姿勢で交渉に取り組むことを求めています。

COP16の役割として、私たちは来年南アフリカで開催されるCOP17での合意のプロセスの素地を固めることが重要と考えています。具体的には、緩和、MRV(測定、報告、検証)、適応、資金等の主要な論点について合意または合意への道筋を確保することが重要と考えます。

― 一方で、日本政府がCOP16における交渉で重点を置いているポイントはどこにあるとお考えですか。

日本政府は、よく報道等でもみられるように、京都議定書の単純延長には反対しています。京都議定書でカバーされている排出削減義務のある国々の排出量を積み重ねても、2008年の世界の総排出量の3割弱しかない、という理由を挙げています。

また、途上国を温室効果ガス削減の取り組みに加えていくための方法として、削減の取り組みを測定・報告・検証(MRV)する世界的な枠組み作りを推進しています。これは、途上国の削減に義務を課すところまではいかないまでも、各国で策定する削減行動計画を、きちんと客観的に評価することで、削減に対する一定のプレッシャーを与えるものになると、日本政府は考えているからです。

― 最後に、日本の若者に向けてメッセージをお願いします。

数ある社会問題の中で、気候変動はそれほど重要ではないという雰囲気が若い人の間で出てきているのではないかと感じていて、そのことを危惧しています。また、日本人は自然や気候の変化に敏感ですので、桜の開花や紅葉の時期から、気候が徐々に変わってきていることをそれとなく感じ取っている人が多いにもかかわらず、それを声としては上げようとしない風潮があると思います。

多くの人々のサポートが無ければ、政治家や官僚の人たちが気候変動の対策をがんばっていくのは難しいと感じます。政治家や官僚は批判こそされ、あまり誉められません。多くの人々が「気候変動を気にしている」という雰囲気を感じ取れなければ、気候変動の政治的な優先順位は上がらないと思われます。

例えば、首相官邸の住所などはホームページを見れば分かるのですから、みんなで首相にいっせいに手紙を書くとか、そういう簡単なことでも、気候変動に対する政治の後押しになるでしょう。

もう一つ、若い方々にお伝えしたいのは、いろいろな人の立場に立って考えられるようになって欲しいということです。例えば、気候変動の影響を受けやすい小さな島国の人がどのような気持ちでこの交渉に臨んでいるのか。まだ経済の発展が十分ではない新興国の人たちの気持ちはどのようなものなのか。自分たちの立場だけではなく、複眼的に物事を見ることができるようになってもらいたいと思います。

― どうもありがとうございました。


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